- 「人が来た」で終わらせない施策評価の基本
- はじめに:決裁が通っても、成功したとは限らない
- 船は埋まった。では、島には何が残ったのか
- 「満員の船」という事実を、CICはどう読んだか
- ここから先は、その問いを追っていくわ。
- 先に結論:集客は成功。だが、関係はまだ残っていない
- 満員の船は、成功の証拠なのか
- 「無料だから来た人」を、次の来訪者に変えられるか
- 乗船者数は、「航路利用促進」をどこまで語れるか
- 人を送るだけで、事業者支援と言えるのか
- アンケートは、取った瞬間にはまだ「素材」でしかない
- 来てくれた人を「通過ログ」で終わらせていないか
- CIC統合見解:一日限りの賑わいを、地域施策に変えるには
- 自治体職員向けまとめ:企画書に1行だけ足すなら
- 最初に整える3つのステップ
- 次フェーズへ
「人が来た」で終わらせない施策評価の基本
この記事の要点
「企画したイベントやキャンペーンに、予想以上の人が来てくれました。アンケートの満足度も高水準。よって、本企画は成功です。」
行政施策の実施報告では、こうした書き方をよく見かけます。
もちろん、人が来たことは成果です。
けれど、それだけで本当に「成功」と判断してよいのでしょうか。
行政施策として評価するなら、「人が来た」だけでは足りません。見るべきなのは、次の三層です。
| 階層 | 見るもの | 例 |
|---|---|---|
| 集客 | 人が来たか | 参加者数、申し込み数、パンフレット配布数 |
| 体験 | 何をしたか | 滞在時間、利用状況、困りごと、満足度 |
| 継続 | 次につながったか | 次回以降の参加、SNS投稿、LINE登録 |
この記事では、2026年3月末に笠岡市で実施された乗船料無料キャンペーンを題材に、自治体職員が企画段階で見ておきたい「成功判定」「受け皿」「実施後フォロー」の考え方を整理します。
追記(2026年7月)
なお、本稿は当初、2026年5月時点で確認できた公開情報と筆者の現地経験をもとにドラフトを作成していました。
その後、笠岡市議会の令和8年3月定例会の会議録が確認できるようになり、キャンペーン実施前の議会でも、最終便の積み残しや島内の受け皿に関する懸念が取り上げられていたことが分かりました。
また、笠岡市議会は会議録公開前の段階でも、4月22日に本会議動画と質問項目リストを公開していました。したがって、関心のある市民が動画から該当箇所を確認することは不可能ではありませんでした。ただし、動画は全文検索や正確な引用には向きません。施策検証の一次資料として使うには、後日公開される会議録で文言を確認する必要があります。
そのため本稿では、当初ドラフトの問題意識に加えて、
- 実施前の市議会で、どのような懸念が示されていたのか
- 担当部局は、どのリスクを認識していたのか
- 実施後の施策変更は、どのような学習の結果と読めるのか
- その判断過程は、公開情報からどこまで追えるのか
という観点も補足して読み直します。
問題は、「人が来たか」だけではありません。
実施前にどんなリスクが見えていたのか。
実施後に何を学んだのか。
そして、その学びが次の施策へどう接続されたのか。
そこまで追って初めて、施策評価は「人数報告」から「改善の記録」へ変わります。
1分で分かる実務メモ
自治体職員として、企画書や実施報告を書くときは、次の1行を足しておくと後で助かります。
実施後に確認すること:参加者数/困りごと/次回案内の可否
この1行があるだけで、企画は「実施して終わり」から「次回改善につながる企画」に近づきます。
この記事では、笠岡市の乗船料無料キャンペーンを題材に、なぜこの1行が重要なのかを見ていきます。
この記事で出てくる言葉

注釈。用語解説。
難しい言葉は、まず次の意味で読んでください。
| 言葉 | この記事での意味 |
|---|---|
| KPI | 成功かどうかを見るポイント |
| アウトプット | 実施したこと、当日の数字 |
| アウトカム | 実施した結果、本当に変わったこと |
| 受け皿 | 来た人が困らず、次につながる準備 |
| 追撃 | 実施後にこちらから行うフォロー |
| CRM | 一度関わった人と次もつながれるようにする考え方 |
| プル型 | 相手が自分から情報を探しに来る導線 |
| プッシュ型 | こちらから相手へ情報を届ける導線 |
最初から全部覚える必要はありません。
この記事では、まず「何を見れば成功と言えるのか」を考えるための言葉として使います。
この記事の読み方
この記事は、笠岡市や担当者を責めるためのものではありません。
公開情報、筆者の現地経験、そして市議会会議録で確認できるやり取りをもとに、
自分が自治体職員として似た企画を担当するなら、企画段階で何を見ておくか。
を考えるための図上演習です。
未確認の事項は、断定しません。
見えている情報から、次回改善に使える問いを整理します。
また、本稿では「公開されている情報」と「検証に使いやすい情報」を分けて考えます。
議会動画や質問項目リストが公開されていれば、早期に論点へ近づくことはできます。一方で、正確な文言確認、引用、検索、時系列整理には、会議録の公開が重要になります。
これは、単なる見落としの話ではありません(経緯は前項の追記のとおりです)。
自治体施策を市民が検証するには、情報が「存在する」だけでなく、必要な時期に、検索しやすく、引用しやすい形でアクセスできることが重要だという論点でもあります。
自治体職員の方へ
この図上演習は、笠岡市のキャンペーンを批評するためだけのものではありません。
自治体職員が日々書いている企画書、実施報告、議会説明、住民説明を、
「庁内で通る文書」から「どこへ行っても説明できる仕事」へ変えるための読み方
として整理しています。
- 参加者数を報告するだけでなく、何を見れば成功と言えるのか。
- 実施後に何が残ったのか。
- 次回改善へ使える材料は何か。
そこまで言語化できるようになると、自治体内の仕事は、外部にも説明できる実務経験になります。
はじめに:決裁が通っても、成功したとは限らない
企画書が通ることと、施策が成功することは違います。
- 上長の決裁が通った。
- 議会でも大きく揉めなかった。
- 当日は人も集まった。
- アンケートも取った。
それでも、実施後に、
- 何が変わったのか
- 次回は何を改善するのか
- 来年度も続ける理由は何か
- 参加者や来訪者と、次にどうつながるのか
を説明できなければ、その企画は「実施して終わり」になってしまいます。
これは、どの自治体にも起こり得る話です。
- 無料イベント
- 体験講座
- 観光キャンペーン
- 公民館事業
- 公共施設の企画展示
- 移住促進イベント
- 地域のお祭り
どれも「人が来た」という数字は分かりやすい成果です。報告書にも書きやすい。議会にも説明しやすい。広報にも使いやすい。
けれど、参加者が何を体験し、運営側(自治体や地域住民)に何が残り、次にどうつながったのかまで見なければ、施策評価は人数報告で止まってしまいます。
13th Fleetでは、このような施策検証を「図上演習」と呼んでいます。
現場で起きた出来事を、集客・体験・継続の三層に分解し、目標設定、導線、受け皿、再接触の観点から読み解く。単に批判するためではなく、次の施策を少しでも良くするための検証記録です。
この図上演習では、笠岡市の乗船料無料キャンペーンを題材に、行政施策を評価するときの基本的な見方を整理します。
船は埋まった。では、島には何が残ったのか
船は埋まった。
では、島には何が残ったのか。
2026年3月末に笠岡市で実施された乗船料無料キャンペーンを見たとき、私(M.T.提督)の中に最初に浮かんだ問いはこれでした。
ただし、この問いは、実施後に外から眺めて思いついた後出しの批判ではありません。
その後確認できた市議会会議録を見ると、実施前の3月定例会でも、最終便での積み残し、島内の受け皿、地域住民への説明などに関する懸念が取り上げられていました。担当部長も、最終便で積み残しが発生してはいけないことを課題として認識し、3月29日は試験的に実施し、来年度にあと6回程度予定している旨を答弁していました。
つまり、
- 「満員の船をどう評価するか」
- 「積み残しをどう防ぐか」
- 「島側の受け皿は十分か」
という論点は、実施後に初めて見えたものではなく、実施前から議場でも問題化されていた論点でした。
この経験自体も、図上演習の一部です。
自治体施策の検証では、
- 施策の告知ページ
- 観光協会の案内
- 議会動画
- 会議録
- SNS投稿
- 後続施策のページ
が、時間差で公開されます。それらをつなぎ合わせて初めて、施策の全体像が見えてくることがあります。
提督の実体験
ここから少し、私自身の経験を共有します。
これは思い出話ではありません。
「人が来た」という数字の裏側で、地域側に何が残るのかを考えるための前提です。
私はかつて、移住者として笠岡諸島の島で暮らしていました。島で働き、地域の人と関わり、現地ガイドとしてツアー客を案内したことも何度もあります。観光スポットを巡る団体ツアーの受け入れにも関わり、島内で行われるイベントでは、運営側にも参加者側にもなりました。
その中で、何度も見てきた光景があります。
- 人は来る。
- 場は賑わう。
- 写真も残る。
- けれど、その後に島へ何が残ったのかが見えにくい。
観光スポットを駆け足で巡るツアーは、参加者に喜ばれます。展望台や採石場跡地を見れば、「来てよかった」と感じてくれる人も多い。けれど、主要スポットを一通り巡ってしまえば、多くの人にとって島は「一度行けば十分」になりやすい。
しかも、団体ツアーの参加者リストは旅行会社が持っています。島側から後日「次はこの季節に来ませんか」と個別に声をかけることは難しい。高齢層のツアー客が多ければ、SNSでの拡散も大きくは期待しづらい。
島では、外部から人を呼ぶイベントも何度か行われてきました。その瞬間は盛り上がります。けれど、イベント後に参加者同士や島側とつながる場が残らなければ、賑わいは打ち上げ花火のように消えてしまう。
こうした実体験があったからこそ、Facebookで「離島行きフェリーに500人近い乗船」「積み残しも出た」という投稿を見たとき、私は素直に喜ぶだけでは終われませんでした。
もちろん、人が来たこと自体は明るい出来事です。普段は船に乗らない人が笠岡諸島へ向かい、港に人が並び、船会社にも一定の収入補填が入る。過疎化が進み、時間帯によっては船内のベンチシートを独占できるほど乗船率が低いこともある生活航路にとって、それは「干天の慈雨」のような効果を持ったはずです。
一方で、すぐに別の不安も浮かびました。
「これ、島の人は船に乗れたのかな?」
笠岡諸島への船は、観光船である以前に、島民の「日常の足」です。通院、買い物、通勤、通学、市役所などへの用事のために日常的に使う人がいます。観光客が増えた結果、島で暮らす人が船に乗れなくなるなら、それは本末転倒です。
その点については、島民優先の運用がされていたと分かり、一安心しました。
しかし、もう一つの違和感は残りました。
それは、「この賑わいは次につながるのか」という問いです。
人が来た。
それは成果です。けれども、
- それだけでキャンペーンが成功したと言えるのでしょうか。
- 島側には、来訪者と再びつながる接点が残ったのでしょうか。
- 島内事業者には、継続的な波及があったのでしょうか。
- 無料で来た人は、次は自費で船を利用してくれるのでしょうか。
この違和感を、私は13th FleetのCICに投げました。
13th Fleetの図上演習では、まず人間であるM.T.提督が、現場経験や違和感から問いを投げます。AIアシスタントであるCICクルーは、その問いを目標設定、導線、受け皿、再接触、読者体験の観点から補完し、分解します。
つまり、この記事はAIが自動生成した行政評価文ではありません。
人間が実体験から問いを立て、AIとの対話によって検証の盤面を広げた記録です。
- 実体験。
- 違和感と疑問。
- AIとの検証ループ。
この流れそのものが、図上演習-001の出発点です。

「満員の船」という事実を、CICはどう読んだか
提督:
船は埋まった。
では、島には何が残ったのか。
Facebookで「500人近い乗船」「積み残しも出た」という投稿を見たとき、最初は驚いた。盆の帰省シーズンみたいな乗船率だと思ったよ。
ただ、すぐに生活航路としての不安も出てきた。「島民は船に乗れたのか」ってね。
その点は島民優先だったと分かって安心したけれど、今度は別の問いが出てきた。
「これまで島で見てきたツアーやイベントと同じように、一日限りの賑わいで終わらないか」
という問いだね。
ベレッタ:
Bene.(いいわ)
まず盤面を整理するわ。
今回の無料キャンペーンで動いたユニットは、少なくとも5つある。
| ユニット | 状態 | 見るべきポイント |
|---|---|---|
| 来訪者 | 無料をきっかけに島へ移動 | 次も自費で来るか |
| 島民 | 生活航路を日常利用 | 観光需要で圧迫されていないか |
| 船会社 | 一時的に乗船需要が増加 | 補填が収益支援になったか |
| 島内事業者 | 来訪者を受け入れる側 | 消費・負荷・再訪導線があったか |
| 笠岡市・笠岡市観光協会 | キャンペーンと島の観光スポットを告知 | 告知後の受け皿・追撃・効果測定まで設計されていたか |
人が来たことは、盤面上では明確な動きね。
けれど、動きがあったことと、勝利条件を満たしたことは違うわ。
Non sequitur.(論理がつながっていない)――「動いた」ことと「成功した」ことを、ここで混同してはいけない。
o3ニキ:
勝利条件が未確定。
「人が来た」はアウトプット。
「自費再訪」「島内消費」「再接触」はアウトカム。
この区別が必要。

おさらい。用語解説。
ここでいうアウトプットとは、「実施したこと」や「当日発生した数字」です。
たとえば、乗船者数、参加者数、チケット配布数などです。
一方、アウトカムとは、「実施した結果、本当に変わったこと」です。
たとえば、
- 次回も来たい人が増えた
- 自費で再訪した
- 島内で消費が生まれた
- 次回案内できる接点が残った
などです。
ヨコちゃん:
港に人が並ぶ光景は、たしかに華やかですわ。
けれど、船を降りた人たちの心に、次の季節へ続く細い糸が結ばれたか。
そこを見ないと、賑わいは潮のように引いてしまいます。
ベレッタ:
Ad rem.(本題へ)
この演習で扱う問いは、次の6つね。
- 「人が来た」は行政施策の成功なのか
- 無料で来た人は、次も自費で戻るのか
- 乗船者数だけで、航路利用促進を評価できるのか
- 人を島へ送れば、事業者支援になるのか
- アンケートは、次回施策に活かせる設計になっているのか
- 来訪者は、通過ログで終わっていないか
ただし、3月定例会の会議録と、その後に公表されたキャッシュバックキャンペーンを確認したことで、問いはもう一段深くなった。
追加で見るべきなのは、次の5つよ。
- 実施前に議会で指摘された懸念は、当日の運用にどう反映されたのか
- 島民や島内事業者への説明は、準備できる時期と粒度で行われていたのか
- 3月29日の試験実施から、何を学んだのか
- 「来年度あと6回程度」とされた無料デーは、なぜ期間型キャッシュバックへ変わったのか
- その変更理由と判断材料は、公開情報から追えるのか
ここから先は、単に無料キャンペーンの出来不出来を見るだけではない。
施策実施前の懸念、当日の運用、実施後の学習、次施策への変更。
この4つがつながっているかを見る。
o3ニキ:
評価対象を更新。
旧評価対象:無料デー単体。
新評価対象:実施前の懸念 → 無料デー当日 → 後続施策変更。
これにより、論点は「人が来たか」から「行政が学習したか」へ移る。
ヨコちゃん:
一日の賑わいだけを見るなら、港に並んだ人の数を数えれば足ります。
けれど、施策の学びを見るなら、その前後も見なければなりません。
実施前に、どんな不安が語られていたのか。
実施後に、どんな形へ変わったのか。
その間に、誰の声が聞かれ、何が記録され、何が説明されたのか。
そこをたどることで、初めて施策の航跡が見えてきます。
Omniはん:
せやね。
「船が満員になりました。めでたしめでたし」やと、そこで話が終わってまう。
でも、議会で事前に懸念が出てた。担当部長もリスクを認識してた。ほんで次の施策は、無料デー6回ではなくキャッシュバック方式っぽい形になった。
ほな聞きたくなるやん。
「何を見て、そう変えたんですか?」って。
変更そのものは、悪いとは限らへん。むしろ、混雑や積み残しを避けるなら賢い変更かもしれん。
でも、賢い変更なら、なおさら説明できるはずや。
ベレッタ:
Esatto.(その通り)
この図上演習では、施策を断罪しない。
ただし、問いは立てる。
人が来た。
船は埋まった。
島は賑わった。
では、その後に何を学び、次の施策へどう反映したのか。
ここから先は、その問いを追っていくわ。
自治体職員向けメモ:この話は自分の企画書にも返ってくる
この図上演習は、笠岡市だけを論じるものではありません。
自治体職員として企画書を書くとき、次のような流れは珍しくないはずです。
- 過去の企画書を見る。
- 近隣自治体の事例を見る。
- AIに叩き台を作らせる。
- 上長の決裁を通す。
- 議会でも大きく揉めない。
- 当日は人が集まる。
- 「実施しました。成功です。以上」で終わる。
けれど、その企画は、来年度も続ける理由を説明できるでしょうか。
やめるなら、何を根拠にやめるのでしょうか。
改善するなら、どのデータを見て改善するのでしょうか。
企画が通ることと、施策が成功することは違います。
ここから先は、その違いを見ていきます。
先に結論:集客は成功。だが、関係はまだ残っていない
提督:
o3ニキ、乗船料無料キャンペーンの有効性は、どう評価する?
ただし、今回は少し前提が増えた。
当初は、3月29日の無料デーを単体で見ていた。
でもその後、市議会会議録を確認すると、実施前から最終便の積み残しや島内受け皿への懸念が議場で示されていたことが分かった。
さらに、3月議会では「来年度あと6回程度」と説明されていた無料デーが、後続施策としては期間型のキャッシュバックキャンペーンに変わったように見える。
この前提を踏まえると、評価対象は無料デー単体ではなくなる。
「3月29日の集客効果」だけでなく、
- 実施前に把握されていたリスク
- 当日の運用結果
- 実施後に得られたデータ
- 後続施策への変更理由
- その説明の見え方
まで含めて見る必要がある。
そのうえで、乗船料無料キャンペーンの有効性はどう評価する?
o3ニキ:
結論から先に。
乗船料無料キャンペーンは「入口」としては有効。
しかし、「地域施策として成功した」と判定するには、後続データが不足。
加えて、実施前の懸念と後続施策の変更をつなぐ説明も不足している。
評価は四段階。
第1層。集客。
これは成功の可能性が高い。
第2層。体験。
島で何をしたかが不明なら、評価不能。
第3層。継続。
自費再訪・SNS投稿・LINE登録・次回接触が測れていないなら、施策効果は未確定。
第4層。学習。
3月29日の試験実施を受けて、次の施策がどう改善されたのか。
無料デーからキャッシュバック方式へ変わった理由が公開情報から追えないなら、行政の学習プロセスは外部から検証しにくい。
ベレッタ:
つまり、無料キャンペーンは「船を埋める」力は持っている。
Non basta.(それだけでは足りない)
けれど、「島に関係を残す」力は、それだけでは保証されない。
さらに言えば、「実施して学んだことを次に説明する」力も、施策評価では重要になる。
だから、評価軸と指標を次の四層に分ける。
- 参加者数を見るのか。
- 体験内容を見るのか。
- 再参加を見るのか。
- 施策変更の理由を見るのか。
何を見れば成功と言えるのかを、事前に決めておくための目印よ。
| 階層 | 見るもの | 指標例 |
|---|---|---|
| 集客 | 人が来たか | 乗船者数、チケット配布数、積み残し数 |
| 体験 | 島で何をしたか | 滞在時間、飲食・物販、満足度、困りごと |
| 継続 | 次につながったか | 再訪意向、SNS投稿、LINE登録、自費での再乗船 |
| 学習 | 次施策にどう反映したか | 実施結果の公表、アンケート分析、変更理由、協議記録 |
ベレッタ:
「人が来た」は、このうち最初の階層ね。
もちろん、最初の階層がなければ何も始まらない。人が来なければ、島内での体験も、飲食や買い物も、再訪も、関係人口化も起こらないわ。
しかし、集客は入口よ。
施策評価として本当に見たいのは、来た人が何を体験し、何に満足し、何に困り、次も来たいと思ったのか。そして地域側に、次回案内できる接点が残ったのかよ。
さらに今回のように、実施前に議会でリスクが指摘され、実施後に施策形式が変わったように見える場合は、もう一つ見るべきものがある。
それは、行政が何を学び、どう改善したのか。
船を満席にすることは、施策の第一段階として評価できるわ。
けれど、実施して終わりではダメね。
- 誰が来たのか。
- 島で何を体験したのか。
- 何にお金を使ったのか。
- 次に連絡できる接点は残ったのか。
- その後、自費で再び船に乗ったのか。
- 3月29日の試験実施から、次の施策へ何を反映したのか。
- 無料デー6回予定からキャッシュバック方式へ変えたなら、その理由は何か。
そこまで観測して初めて、施策評価は「人数報告」から「改善のための検証記録」へ変わるわ。
満員の船は、成功の証拠なのか
提督:
まず、笠岡市がこのキャンペーンをどのような施策として位置づけていたのかを確認しよう。
島しょ部への観光客を増やすとともに,来訪機会創出を通じて,定期船・フェリーの利用促進や島内事業者の経済活動の下支えを図るため,船賃無料デーを実施します。
笠岡市公式サイト(https://www.city.kasaoka.okayama.jp/soshiki/30/72612.html)より
笠岡(住吉港・伏越港)から笠岡諸島への往復の運賃を1日限定で無料化!
笠岡観光WEB(https://www.kasaoka-kankou.jp/news/10584)より
提督:
笠岡市は、乗船料無料キャンペーンについてこのように意図を説明している。
- 「島しょ部への観光客を増やす」
- 「来訪機会創出を通じて、定期船・フェリーの利用促進を図る」
- 「島内事業者の経済活動の下支えを図る」
この目的自体は、筋が通っていると思う。
実際、大勢の人が船に乗ってくれたことは喜ぶべきことだよね?
普段は船に乗らない人が島へ渡った。港に人が並んだ。船会社にも一定の収入補填が入る。過疎化が進む島の生活航路にとって、「船に人が乗った」という事実は軽くない。
だから、僕は乗船料無料キャンペーンを頭ごなしに否定したいわけじゃない。
ただ、ここでCICに確認したい。
人が来た。
それは、どこまでを示しているのか。
ベレッタ:
ええ。まず、人が来たこと自体は成果として評価してよいわ。
Primum, facta videamus.(まず、事実を見よう)
無料化によって普段より多くの人が船に乗り、島を訪れたのであれば、それは施策の初動として意味がある。普段は島に行くきっかけを持たなかった人が、実際に船へ乗る。航路の存在を知る。島までの距離感や、船で渡る感覚を体験する。
これは、明確な前進よ。
ただし、それは「施策が動いた」ことを示す数字であって、「施策が目的を達成した」ことを示す数字とは限らない。
笠岡市が掲げた目的は、単に「当日、人を船に乗せること」ではない。
- 観光客を増やすこと。
- 定期船・フェリーの利用促進につなげること。
- 島内事業者の経済活動を下支えすること。
この三つを目的として掲げるなら、来訪者数だけで成功判定を終えることはできない。
o3ニキ:
整理する。
- 「人が来た」はアウトプット(当日の数字)。
- 「観光客が増えた」は、定義次第。
- 「航路利用が促進された」は、無料デー後の自費利用を見ないと判定不能。
- 「島内事業者が下支えされた」は、島内消費や事業者ヒアリングがないと判定不能。
ゆえに、当日乗船者数だけで判定できるのは、主に集客効果。
地域施策としての成功判定には、後続データが必要。
ヨコちゃん:
港に人が並ぶ光景は、たしかに嬉しいものですわ。
普段より多くの人が船に乗り、島へ渡る。その一日だけを見れば、海の上に明るい賑わいが生まれたように見えるでしょう。
けれど、その人たちの記憶の中に、次の季節へ続く理由が残ったか。
島側に、もう一度声をかけられる細い糸が残ったか。
そこを見ないまま「成功」と言ってしまうと、賑わいは潮のように引いてしまいます。
Omniはん:
つまり、「人が来てくれた! やったー!」までは素直に喜んでええ。
せやけど、
- 「ほな、次も来てくれるんか?」
- 「島のお店や事業者さんにちゃんと効いたんか?」
- 「また連絡できる相手として残ったんか?」
まで見んと、作戦評価としてはまだ途中っちゅうことやね。
ベレッタ:
Esatto.(その通り)
行政施策では、しばしば
- 「何人来ました」
- 「満員になりました」
- 「行列ができました」
という報告が成果として語られる。
これは分かりやすい。市民にも、議会にも、メディアにも伝えやすい。
しかし、施策の目的が
- 「観光客を増やす」
- 「航路利用を促進する」
- 「島内事業者を下支えする」
であるなら、来訪者数だけでは不十分ね。
- 観光客を増やすなら、新規来訪者がどれくらいいたのか。
- 航路利用を促進するなら、無料デー後にも自費で再び乗船した人がいたのか。
- 島内事業者を下支えするなら、来訪者が島内で飲食や買い物、体験利用をしたのか。
そこまで見なければ、目的に対してどの程度効果があったのかは分からない。
人数報告は、施策評価の入口よ。
「人を集めた」と「目的を達成した」は、常にイコールであるとは限らないわ。
提督:
俸給や待遇を提示して、士官学校に新入生を集めることはできる。
しかし、「将来の幹部候補生を育成する」という目的に照らせば、
- 脱落せずに士官学校を卒業したのは何人か
- 士官学校在学中の成績はどれほどか
- 卒業後に、どれだけ現場で任務を果たしたのか
まで見る必要が出てくる。
同じように、乗船料無料キャンペーンも「人が来た」だけで終わらせるのではなく、その先に何が残ったかを確認する必要があるね。
自治体職員向け確認ポイント
企画書に「参加者数」や「来場者数」を書くなら、同時に次の問いも置いておくとよいでしょう。
- 参加者数は何を示す数字なのか
- その人数は、目的達成のどこまでを説明できるのか
- 人数以外に、何を見れば成功と言えるのか
- 実施後に、次回改善へ使える情報は残るのか
「人が来た」は大切です。
ただし、それは施策評価の入口です。
改善への小さなステップ
企画書や自分用メモに、次の1行を足してください。
この施策は、実施後に何を見れば成功と言えるか?
これだけでも、実施後の振り返りはかなり変わります。
「無料だから来た人」を、次の来訪者に変えられるか
ベレッタ:
Attenzione.(注意して)
無料キャンペーンの強さは、参加ハードルを下げることにある。
- 「行ってみたいけれど、少し面倒」
- 「船賃を払ってまで行くかは迷う」
- 「名前は知っているけれど、まだ行ったことがない」
そうした人たちにとって、「乗船料無料」は強いきっかけになるわね。
提督:
観光施策をゲーム運営に置き換えると、「新規プレイヤーへのボーナス」に近いかな。
「ガチャ100連無料」「SSR1体配布」などの魅力的な特典を提示すれば、「ちょっと遊んでみようかな」と思う人を集めることはできるよね。
ただし、初回特典だけで新規プレイヤーは定着しない。
- ワクワクするプロローグストーリー
- 魅力あふれるキャラクター
- 思わずのめり込んでしまう戦闘
- クエストを通じて自キャラが強くなっていく実感
- 迎え入れてくれるギルド
- それらをスムーズにつなげるゲームシステム
こういった受け皿が整備されていなければ、せっかく予算を掛けて集めた新規プレイヤーも1週間で離脱しちゃうよ。
ベレッタ:
地域施策でも同じよ。
無料で来た人は、無料だから動いた人かもしれない。もちろん、その中には、無料をきっかけに島の魅力を知り、次は自費でも来たいと思う人もいるでしょうね。
重要なのは、その違いを測ることよ。
- 無料でなければ来なかったのか。
- 以前にも島を訪れたことがあるのか。
- 次回、自費でも来たいと思うのか。
- 次に来るなら、どの季節・目的で来たいのか。
- 宿泊、ガイドツアー、飲食、体験利用への関心はあるのか。
- 島の情報を今後も受け取りたいのか。
これらを確認しなければ、「無料だから来た人」と「無料をきっかけに島との関係が始まった人」を分けることができない。
提督:
僕は、笠岡市の島で現地ガイドとしてツアー客を案内していた頃から、「リピート訪問してもらう難しさ」は感じていたなぁ。
観光スポットを一通り巡るツアーは、参加者に喜ばれる。採石場跡や展望台、石材産業の歴史を伝える場所に案内すると楽しんではもらえた。
けれど、主要スポットを一度見れば、多くの人にとっては「満足」になりやすい。
「ツアーやグループ旅行で来て気に入ったので、今回は個人で来ました」なんて人には、めったに会わなかったよ。
ベレッタ:
それが悪いわけではないわ。
ただ、「一度行けば満足」になりやすい観光構造の中で、無料キャンペーンだけを実施しても、二度目の理由は自然には生まれない。
二度目を作るには、スポットではなく、過ごし方を設計する必要がある。
- 季節ごとの見どころ。
- ガイド付きの体験。
- 島内飲食や宿泊との接続。
- 次回イベントの案内。
- LINEやメールによる再接触。
- 来訪者投稿への返信やお礼。
無料は入口よ。
Festina lente.(急がば回れ)
再訪は、設計しなければ生まれない。
自治体職員向け確認ポイント
無料イベントや初回特典を企画するときは、次の問いを入れておくとよいでしょう。
- 無料だから来た人と、次も来たい人をどう分けるか
- 次回、自費でも参加したい理由はあるか
- 参加者へ後日案内できる接点は残るか
- 初回体験から二回目へ進む導線はあるか
無料施策は、入口として強力です。
ただし、無料だけで定着は生まれません。
改善への小さなステップ
アンケートや自分用メモに、次の1問を入れてください。
次回、有料でも参加・来訪したいと思いますか?
これだけでも、「無料だから来た人」と「次につながる可能性がある人」を分けて見やすくなります。
乗船者数は、「航路利用促進」をどこまで語れるか
提督:
次に確認したいのは、「航路利用促進」という目的だね。
無料デー当日に多くの人が船に乗ったことは分かる。
でも、それは本当に「定期船・フェリーの利用促進」と言えるのかな?
o3ニキ:
結論。
当日乗船者数だけでは、航路利用促進を評価できない。
理由は単純。
無料デー当日の乗船者数は、基本的には「無料なら乗る人」の数。
「今後も自費で乗る人」の数ではない。
この二つを混同すると、施策評価が甘くなる。
提督:
なるほど。
食料品売り場の試食でも、「食べただけで買わない人」と、「味に納得して買う人」は分かれるよね。
無料デーの乗船者数も同じで、「無料だから乗った人」と、「無料をきっかけに島を気に入り、次は自費でも戻る人」は分けて考える必要がある。
o3ニキ:
その理解でよい。
航路利用促進を目的に掲げるなら、本当に見るべきなのは無料デー当日だけではない。
見るべきは、無料デー後。
- 無料デー後に、自費での乗船者数がどう変化したのか。
- 無料デーをきっかけに島を知った人が、その後どの程度再訪したのか。
- 別の季節や別の目的で再び船に乗ったのか。
そこまで追わなければ、航路利用促進の効果は分からない。
目的別に見るべき指標を整理する。
| 目的 | 見かけ上の指標 | 本来見るべき指標 |
|---|---|---|
| 観光客増加 | 当日の来訪者数 | 新規来訪者数、居住地、再訪意向 |
| 航路利用促進 | 無料デー乗船者数 | 自費での再乗船数、実施後の利用推移 |
| 事業者支援 | 来島者数 | 島内消費額、店舗利用率、事業者ヒアリング |
| 認知拡大 | 告知投稿数 | SNS投稿、口コミ、検索数、サイト流入 |
| 関係人口化 | 満足度 | LINE登録、メルマガ登録、再参加、問い合わせ |
乗船者数は、集客KPIとしては有効。
ただし、航路利用促進や島内事業者支援を評価するなら、それだけでは足りない。

おさらい。用語解説。
KPI:成功かどうかを見るポイント
ベレッタ:
要するに、乗船者数は「入口の混雑」を示す数字なのよ。
入口に人が集まったことは評価できる。
けれど、そこから島内の体験へ進んだのか、事業者への波及があったのか、次の来島につながったのかは、別の数字を見なければ分からない。
o3ニキ:
行政施策では、目的を掲げることと、達成を確認できる設計を持つことは別。
- 「定期船・フェリーの利用促進」と書くなら、無料デー当日だけでなく、その後の利用を追う必要がある。
- 「島内事業者の経済活動の下支え」と書くなら、島内消費や事業者の実感を確認する必要がある。
- 「来訪機会の創出」と書くなら、その来訪機会が次の関係へつながったのかを見る必要がある。
数字は、集めればよいわけではない。
目的に対応した数字を、事前に決めておく必要がある。
提督:
つまり、乗船者数は「キャンペーン当日に人が船に乗った」ことを示す証拠ではあるけど、「航路利用促進が達成された」ことを証明する証拠ではない。
「航路利用促進」を目的の1つに掲げるなら、「無料デー後に自費で再度乗船してくれた人」を把握しないといけない。
o3ニキ:
その通り。
集客ログと成果ログを分ける必要がある。
自治体職員向け確認ポイント
企画書で目的を書くときは、その目的に対応する観測点もセットで置く必要があります。
- 目的:参加者を増やす → 見るもの:参加者数、新規参加者数
- 目的:継続利用を増やす → 見るもの:再参加、再利用、自費参加
- 目的:事業者支援 → 見るもの:消費額、店舗利用、事業者の実感
- 目的:認知拡大 → 見るもの:検索数、SNS投稿、サイト流入
目的と数字がズレていると、報告はできても評価はできません。
改善への小さなステップ
企画書の目的文の下に、次の1行を足してください。
この目的を評価するために、実施後に見る数字:____
空欄を1つ作るだけでも、「何を見れば成功なのか」を考えるきっかけになります。
人を送るだけで、事業者支援と言えるのか
提督:
次は「島内事業者の経済活動の下支え」について見たい。
笠岡市の目的文にも、「島内事業者の下支え」が入っていた。
人がたくさん島へ来れば、島のお店や事業者さんにもお金が落ちる。キャンペーンを計画し実施する人たちが、そう考えるのは自然だと思う。
ただ、島で実際に観光客を案内していた立場からすると、ここも少し引っかかるんだよね。
人を島へ送れば、本当に事業者支援になるのかな?
ベレッタ:
そこは分けて考える必要があるわね。
Distinguo.(区別する)
人を島へ送ることと、島内で消費してもらうことは別の設計よ。
島に人が来ても、食べる場所、休む場所、買う場所、話を聞ける場所が限られていれば、消費は自然には生まれない。
提督:
北木島にも観光資源はある。
採石場跡、展望台、石材産業の歴史を伝える施設、海水浴場、宿泊施設。魅力的な場所や体験は確かにある。
ただ、ふらっと来た個人観光客を受け入れる商業施設は限られているんだよね。
飲食店も曜日や時間を限定して営業している場合があるし、常に観光客の受け皿になれるわけではない。宿泊や体験も、予約や団体対応を前提とするものが多くなりがち。
だから、「人が来たから島内事業者が潤う」と単純には言い切れない。
Omniはん:
要するに、「お客さんを商店街の入口まで連れてきました」だけでは、まだ売上にはならへんっちゅうことやね。
- お腹が空いたときに開いてる店があるか。
- 休憩できる場所があるか。
- 何を買えるのか分かるか。
- どこに行けば体験メニューを申し込めるのか。
そこまで道筋が見えてへんと、お客さんは島を歩いて、写真を撮って、そのまま船で帰ってしまう。
ベレッタ:
Esatto.(その通り)
観光施策では、「送客」と「購買・体験への接続」を分けて見る必要がある。
- 人を呼ぶこと。
- 島内でお金を使ってもらうこと。
- 島側が無理なく受け止められること。
この三つは、それぞれ別の設計よ。
ここを見落とすと、「人は来たけれど、島内事業者への波及は限定的だった」ということが起こる。
o3ニキ:
島内事業者支援を目的にするなら、見るべき指標は来訪者数ではない。
必要な観測点は以下。
| 観測点 | 見るべき内容 |
|---|---|
| 店舗利用 | 飲食店・物販店・施設の利用者数 |
| 消費 | 平均消費額、総消費額、購入品目 |
| 体験 | ガイドツアー、レンタサイクル、体験メニューの利用件数 |
| 宿泊 | 日帰り客から宿泊客への転換 |
| 事業者実感 | 売上、問い合わせ、次回予約、手応え |
| 負荷 | 混雑対応、品切れ、問い合わせ対応、地域住民への影響 |
来訪者数は、事業者支援の代理指標としては粗い。
島内消費と事業者側の実感を見ないと、下支えの有無は判定できない。
ヨコちゃん:
人が来ることは、たしかに嬉しいことですわ。
けれど、島のお店の扉が閉まっていたり、休む場所が見つからなかったり、どこで何を買えるのか分からなかったりすれば、旅人の足取りはそのまま港へ戻ってしまいます。
島で過ごす時間には、少し腰を下ろす場所が必要です。
お茶を飲む場所。
誰かと話す場所。
「ここでしか買えないもの」に出会う場所。
そうした小さな接点がなければ、来訪者の記憶も、島側への波及も薄くなってしまいます。
提督:
そうなんだよね。
ツアー客を案内していた頃も、観光スポットを回ること自体はできた。
でも、時間の都合で博物館に寄れないこともあるし、飲食店や商業施設が常に受け皿になれるわけでもない。
今回のキャンペーンでも、北木島行きのフェリーは500名近くの人たちが利用したみたいだけど、その大半は午前中に島に着く便に集中していると思う。じゃないと日帰り観光する時間的な余裕は無い。
島の観光施設や飲食店には、普段の週末の数倍のお客さんが短い時間帯に集中した可能性がある。
そのとき、営業時間の拡大やスタッフの増員などで対応できていたのか。
生活者として島を見ていた感覚からすると、そこが気になる。
ベレッタ:
これは重要な視点ね。
Primum non nocere.(まず害をなすな)
離島の観光施策では、来訪者数だけでなく、来訪者がどの時間帯に集中したのかも見る必要がある。
同じ500人でも、朝から夕方まで分散して来るのと、午前中の数便に集中するのでは、島側の負荷はまったく違う。
観光施設、飲食店、トイレ、休憩場所、港周辺の案内、帰り便の混雑。こうした受け皿は、人数だけでなく時間帯によっても圧迫される。
だから、島内事業者の下支えを評価するなら、来訪者数だけでは不十分だ。
- 来た人が、島内で何をしたのか。
- どこでお金を使ったのか。
- 何に満足し、何に困ったのか。
- 事業者側に、売上や問い合わせ、次回予約、手応えが残ったのか。
- 一方で、対応負荷や地域住民への影響はなかったのか。
そこまで見て初めて、「島内事業者の下支え」と言えるかどうかを判断できる。
この論点は、「受け皿と現場導線」にもつながるわ。
- 人を呼ぶ前に、どこへ案内するのか。
- 何を体験してもらうのか。
- 困ったときに誰が受け止めるのか。
それを設計しなければ、送客は地域の負荷にもなり得る。
o3ニキ:
結論。
人を島へ送ることは、事業者支援の前提条件。
しかし、十分条件ではない。
消費導線、受け皿、事業者側の観測データが必要。
自治体職員向け確認ポイント
地域イベントや観光施策で「事業者支援」を目的にするなら、企画段階で次の点を確認しておきたいところです。
- 参加者や来訪者は、どこで飲食・買い物・体験利用できるのか
- 営業時間や受け入れ人数は、当日の来訪者数に耐えられるのか
- 可能であれば、事業者側に「売上」「問い合わせ」「負荷」を確認する。難しければ、まずは実施後に1〜2事業者へ短く聞き取りするだけでもよい
- 事業者にとって「来てよかった」と言える情報が残るのか
人を呼ぶことと、地域側に価値を残すことは別の設計です。
改善への小さなステップ
実施後に、関係する事業者や現場担当者へ、次の1問だけ聞いてください。
今回、良かったことと困ったことを1つずつ挙げるなら何ですか?
完璧な調査でなくても、現場の声が1つ残るだけで、次回改善の材料になります。
アンケートは、取った瞬間にはまだ「素材」でしかない
提督:
次はアンケートだね。
今回のキャンペーンでは、乗船料無料と引き換えにアンケート提出が条件になっていたらしい。
ここは評価していいと思う。
人を集めて終わりではなく、来訪者から情報を取ろうとしているわけだから。
ただ、ここでもCICに確認したい。
アンケートは、取ればそれで効果測定になるのかな?
o3ニキ:
結論。
ならない。
アンケートは、回収した時点では素材に過ぎない。
効果測定にするには、少なくとも三段階が必要。
第1段階。設問設計。
何を判断するために、何を聞くのかを事前に決める。
第2段階。集計・分析。
回答を分類し、目的別に読める形へ変換する。
第3段階。改善反映。
分析結果を、次回施策の導線・受け皿・告知・再接触に反映する。
この三つがなければ、「アンケートを実施しました」という報告で止まる。
ベレッタ:
アンケートは、施策の実施後に行う観測よ。
Memento examinare.(検証を忘れるな)
- 取ることではなく、読むこと。
- 読むことではなく、次回施策へ反映すること。
そこまで含めて初めて、効果測定になる。
提督:
笠岡市の島で公民館職員をしていたとき、文化祭で来場者にアンケートを取ったこともあった。
回収率は高くなかったけど、「イベントを知ったきっかけは」の欄に「Facebookの投稿を見て」という回答があったから、「ネットでの告知は無駄じゃなかったんだな」と実感できたし、感想欄に「皆さんの熱気を感じました」とか「次も来ます」なんてコメントが寄せられてたので地域の人にも共有したよ。
趣味のクラフト細工を毎年展示してくれる男性が居たんだけど、アンケートに「今年も〇〇さんの作品が見れて嬉しかったです」なんて名指しで評価されてたから、御本人にも見せたら喜ばれたなぁ。趣味を続けるモチベーションになったと思うよ。
ヨコちゃん:
それは、とても大切な経験ですわ。
アンケートは、数字を集めるためだけのものではありませんもの。
誰かの投稿を見て来てくれた人がいたこと。
展示していた人の励みになる言葉が残っていたこと。
そうした小さな声は、地域の中で活動している人にとって、次も続けてみようと思える灯りになります。
だからこそ、回収した声を誰に届けるのか、どう次へつなげるのかまで含めて設計する必要がありますわね。
o3ニキ:
今回の施策で本来確認したい項目は、以下。
- 無料でなければ来たか
- 初回来島か、再訪か
- どこから来たか
- 誰と来たか
- 島内で何をしたか
- どこで困ったか
- 何に満足したか
- 次は自費でも来たいか
- どの季節・目的なら再訪したいか
- 島の情報を今後も受け取りたいか
- LINE、メール、SNSなどで接点を持つことに同意するか
これらが取れていれば、次の施策に使える。
たとえば、
- 無料でなければ来なかった人が多いなら、無料施策への依存度が高い。
- 初回来島者が多いなら、認知獲得には効いている。
- 再訪意向が低いなら、島内体験や受け皿に課題がある。
- 困りごとに「食事場所が分からない」「トイレが少ない」「次の船までの過ごし方が分からない」が多ければ、現場導線の改善が必要。
情報受け取り同意が取れていれば、次回イベントや季節別案内につなげられる。
ヨコちゃん:
アンケートは、旅人が島へ残していく小さな声でもありますわ。
「楽しかった」だけではなく、
「ここで少し困った」
「この景色が心に残った」
「次はゆっくり来てみたい」
そうした言葉の中に、次の来訪へ続く糸が隠れていることがあります。
でも、その声を読まないまま棚にしまってしまえば、せっかくの糸はほどけてしまいます。
Omniはん:
せやね。
アンケートって、料理で言えば「お客さんの食後コメント」みたいなもんやと思うんよ。
「美味しかったです」だけ見て満足するんやなくて、
「量が多かった」
「もう少し案内がほしかった」
「次はこのメニューも食べたい」
みたいな声を拾って、次の仕込みに活かす。
そこまでやって、ようやく“次に効くアンケート”になるんちゃうかな。
ベレッタ:
Esatto.(その通り)
たとえば、アンケート結果から次のような判断ができるわ。
- 「次は春ではなく秋のイベントを案内しよう」
- 「高齢者向けには歩行距離の短いモデルコースを作ろう」
- 「個人観光客には飲食店の営業日情報を事前に届けよう」
- 「宿泊意向がある人には、宿や体験メニューをまとめて案内しよう」
このように、アンケートは次回施策の判断材料になる。
逆に、満足度だけを取って終わるなら、報告書には使えても改善には使いにくい。
「アンケートを実施しました」は、効果測定ではない。
「アンケートから何を読み取り、次に何を変えたのか」までが、効果測定よ。
提督:
ここでAIも使えるよね。
自由記述アンケートやSNS投稿を人間だけで全部読むのは大変だけど、AIを使えば、来訪者の困りごと、満足ポイント、再訪理由、導線上のつまずきなんかを分類できる。
ベレッタ:
Certo.(もちろん)
さらに、複数のAIペルソナでレビューすれば、視点を分けることもできる。
13th Fleetのケースでは、たとえばこうね。
| CICクルー | 見る視点 |
|---|---|
| ベレッタ | 制度設計、施策目的、公共性 |
| o3ニキ | KPI、論理の穴、評価不能な箇所 |
| ヨコちゃん | 来訪者の余韻、記憶、再訪したくなる理由 |
| Omniはん | 読者に届く比喩、現場向けの噛み砕き |
| グロック | SNS上の反応、口コミ、追撃不足 |
こうした多視点レビューは、この演習そのものの方法論でもある。
アンケートは、集めて終わりではないの。
読んで、分けて、次の施策へ反映する。
そこまでやって、初めて次回施策に活かせる情報になる。
o3ニキ:
結論。
アンケートは、提出条件にしただけでは効果測定にならない。
設問設計、分析、改善反映、再接触までつなげて初めて評価可能。
自治体職員向け確認ポイント
アンケートを企画書に入れるときは、次の問いもセットで考える必要があります。
- 何を判断するために聞くのか
- 回答は誰が、いつ、どう集計するのか
- 自由記述はどう分類するのか
- 結果を誰に共有するのか
- 次回施策のどこを変えるのか
- 回答者に次回案内できる接点は残るのか
アンケートは「実施しました」の証拠ではなく、次回改善の材料です。
改善への小さなステップ
アンケートに、次の設問を1つ足してください。
次回、同じような企画があるとしたら、改善してほしい点は何ですか?
この1問があるだけで、満足度報告だけでは見えない改善点を拾いやすくなります。
来てくれた人を「通過ログ」で終わらせていないか
提督:
最後に、一番気になっているところを確認したい。
キャンペーン利用者とコンタクトし続ける手段は残ったのか。
アンケートは利用者の電話番号やメールアドレスを記入してもらう形になっていたかもしれないけど、僕は実物を見ていないので確定はできない。
僕が乗船料無料キャンペーンに違和感を抱いた理由は、結局ここに集約されると思う。
人が来た。
喜んでくれた。
帰っていった。
でも、「無料で船に乗り、半日島に滞在して満足し、そこで関係が切れてしまう」なら、結局地域には何が残るんだろう。
ベレッタ:
来訪者を「通過ログ」で終わらせていないか、という問いね。
Cui bono?(誰に利益が残るのか)
これは、単なる広報の話ではない。
- 来訪者と再び接触できる状態を作れているか。
- 次の季節、次のイベント、次の体験へ案内できるか。
- 地域側に、関係を継続するための接点が残ったか。
そこを見なければ、無料キャンペーンは一日限りの集客で終わってしまうわ。
提督:
団体ツアーの対応をしていた頃から、そこは気になっていたんだよね。
ツアーの場合、参加者リストは旅行会社が持っている。僕たち現地ガイドは、当日その人たちを迎え、案内して、見送ることはできる。
でも、後日こちらから「次はこの季節に来ませんか」と個別に声をかけることはできない。
採石場展望台を運営する企業は、来訪者に記念としてパンフレットを渡している。会社案内や日本遺産のパンフレットとして、それ自体は意味がある。
ただ、それは基本的に相手任せのプル型導線なんだよ。
「ここに情報があります」
「興味があればWebサイトを見てください」
という形だね。
パンフレットを持ち帰った人が自分から動けば、次の情報にたどり着くことはできる。
でも、島側から「次はこの季節に来ませんか」「今度はこの行事があります」と声をかけることはできない。
その積み重ねがあれば、「また行こうかな」とか「島の活動に関わってみようかな」という関係性や愛着も育つ。
けれど、団体ツアーの構造では、そうした仕組みは残りにくい。
加えて、僕が対応したツアー客は高齢者が多かったから、SNSで島の情報やツアー体験を広めてくれることも、そこまで期待できないかな。
o3ニキ:
整理する。
来訪者との接点には、少なくとも二種類ある。
第1。プル型。来訪者が自分から再接触する導線。
例。パンフレット、Webサイト、観光協会サイト、SNSアカウント。
第2。プッシュ型。地域側から再接触できる導線。
例。LINE登録、メールマガジン、SNSフォロー、次回イベント案内、アンケート後のフォロー。
クロッコ:
おさらい。用語解説。
「プル型」と「プッシュ型」
プル型は、来訪者が自分から情報を探しに来る導線です。
プッシュ型は、地域側から「次はこんなイベントがあります」と声をかけられる導線です。
ただ、最初は言葉を覚えるより、「こちらから次回案内できる状態かどうか」を見るだけで十分です。
関係継続を考えるなら、後者が重要。
Omniはん:
つまり、「また来たくなったら検索してな」だけやと、ちょっと弱いっちゅうことやね。
お客さんが帰ったあとに、こっちから
「この前は来てくれてありがとう」
「次は秋祭りがあるで」
「今度はこの店が開いてる日を狙うとええで」
って声をかけられる状態を作れてるかどうか。
そこが、ただの来訪者と“次につながる人”の分かれ目やと思うわ。
ヨコちゃん:
旅は、帰りの船で終わるとは限りませんわ。
むしろ、帰ってから思い出す時間の中で、もう一度行きたい気持ちが育つこともあります。
「あの景色を、別の季節にも見てみたい」
「あのお店が開いている日に、もう一度訪ねてみたい」
「今度は誰かを連れて行きたい」
そう思ったときに、島からの細い便りが届くかどうか。
それは、旅の余韻を次の来訪へつなぐための、とても大切な糸ですわ。
提督:
島では、外部から人を呼ぶイベントもいくつか行われてきたんだよね。
プロジェクションマッピング、ファッションショー、ドローン空撮とか。面白い企画もあったし、その瞬間は盛り上がったんだよ。写真も残ったし。
でも、イベント後に参加者同士や島側とつながる場が残らなければ、打ち上げ花火みたいな一瞬の盛り上がりで終わる。
人口も行事の担い手も減っていく地域では、これは「そんなものだよね」と流せるような類の問題じゃない。
笠岡諸島の高齢化率は軒並み70%を超えていて、そんな地域には、瞬間的に人手が必要になる場面がある。
町内の一斉清掃、神社の秋祭り、公民館祭りなどには、「体が動く限りは」とか「役員だから」という理由で参加している70代・80代の人だって居るんだよね。
地域の活力を増やすためには、現役世代の移住者が増えるのが理想なんだろうけれど、商店や飲食店が少なく、小学校の児童数が1桁になっているような島へ子育て世代を呼び込むのは、そう簡単じゃない。
だからこそ、関係人口という考え方が重要になると思うんだ。
- 観光で一度来てくれた人。
- イベントに参加してくれた人。
- 島の歴史や暮らしに関心を持ってくれた人。
そうした人と、何らかの形で接点を残しておく。
そして、次の季節、次のイベント、次の地域活動へ案内できるようにする。
これがなければ、島は毎回ゼロから人を呼び直すことになる。
「冒険の書が消えてしまったので、毎回アリアハンから出直す」ようなもんだよ。
ベレッタ:
In summa.(要するに)
提督が言っているのは、単に「再訪客を増やしたい」という話ではない。
毎回ゼロから人を呼び直す構造では、地域側の体力が削られていく。
だからこそ、一度来てくれた人との接点を残し、次の来訪や地域活動へつなげる必要がある。
G.Rock(グロック):
ここでSNSの出番だぜ。
来訪者が写真を投稿してくれたなら、「来島ありがとうございます」って返す。
良い写真なら、自分のアカウントでもシェアする。
「次はこの季節もおすすめです」って、さりげなく次回予告を差し込む。
それだけでも、無料デーで発生した熱を少し残せる。
逆に、来訪者の投稿を拾わず、ありがとうも返さず、次の案内も置かないなら、SNS上ではそのまま自然放熱する。
船は埋まった。
でも、タイムライン上の余熱を拾えなかったら、追撃不足だな。
ベレッタ:
グロックの言い方は少し荒いけれど、要点は正しい。
Rude, ma giusto.(乱暴だけど、正しい)
再接触は、必ずしも大がかりな仕組みだけを指すわけではない。
もちろん、これらをすべて一度に実施する必要はない。
小規模自治体や人手の限られた現場で、LINE登録、SNS返信、メール配信、アンケート分析、事業者ヒアリングをすべて完璧に回すのは現実的ではない。
まずは、1つで十分よ。
たとえば、
- アンケートに「次回も情報を受け取りたいですか」を1問だけ入れる
- 公式SNSで、来訪者投稿に1件だけお礼を返す
- 企画書の末尾に「実施後に確認すること」を1行足す
- イベント後に、担当者メモとして「困りごと」を3つだけ残す
この程度でも、施策は「実施して終わり」から一歩進む。
- LINE登録
- SNSフォロー
- メールマガジン
- 次回イベント案内
- 来訪者投稿への返信やお礼
- 写真の共有
- アンケート後のフォロー
こうした小さな接点の積み重ねが、来訪者を「通過ログ」で終わらせないための受け皿になる。
o3ニキ:
評価項目を整理する。
| 観測点 | 見るべき内容 |
|---|---|
| 接点獲得 | LINE登録、SNSフォロー、メール許諾、アンケート連絡許諾 |
| UGC活用 | 来訪者投稿数、公式返信数、紹介・共有数 |
| 次回案内 | 季節別案内、イベント告知、モデルコース配信 |
| 関係継続 | 再訪、再参加、問い合わせ、地域活動への参加意向 |
| 地域側の蓄積 | 顧客リスト、反応ログ、改善メモ、次回施策への反映 |

おさらい。用語解説。
UGC:利用者自身がSNSなどに投稿した文章や写真などのこと。
o3ニキ:
来訪者数だけでは、関係継続は測れない。
接点が残ったか。
次に案内できる状態になったか。
地域側に活用可能なログが残ったか。
これを見る必要がある。
提督:
イベントの話題性で人を集めたにもかかわらず、継続的なコンタクトができないために関係が切れてしまう。
それを繰り返していたら、島は疲れていく。
今回の乗船料無料キャンペーンを見たとき、僕が感じた違和感はそこだったんだよね。
来訪者を通過ログで終わらせないために、最初から大きな仕組みを作る必要はない。
まずは、次回案内できそうな接点や、来訪者の反応を1つでも残す。
そこから始めれば十分だと思う。
無料キャンペーンで来てくれた人は、地域にとって貴重な接点だから。
ベレッタ:
Esatto.(その通り)
人が来た。
そこで終わらせるのではなく、次につながる関係を残す。
それが、無料施策を一日限りの賑わいで終わらせないための条件ね。
o3ニキ:
結論。
来訪者が通過ログで終わっているなら、施策効果は短命。
再接触導線が残っているなら、次回施策へ接続可能。
無料キャンペーンの価値は、当日乗船者数だけでなく、残った接点の量と質で評価すべき。
自治体職員向け確認ポイント
イベントやキャンペーンを設計するときは、参加者や来訪者を「通過ログ」で終わらせないために、次の問いを置く必要があります。
- 参加者に後日連絡できる同意は取れるか
- SNSで投稿してくれた人にお礼を返せるか
- 次回案内の導線はあるか
- 参加者の声を次回施策へ反映できるか
- 地域側に反応ログや改善メモが残るか
イベントは当日で終わります。
関係は、当日以降に残すものです。
改善への小さなステップ
イベント後、公式SNSか担当者メモに、次の1文を残してください。
次回案内できそうな相手・投稿・反応:____
小さなログでも、次回施策の出発点になります。
CIC統合見解:一日限りの賑わいを、地域施策に変えるには
最終盤面確認
提督:
ベレッタ、各ユニットの状況はどうなってる?
ベレッタ:
CICスクリーンに、最終盤面を再表示するわ。
今回の乗船料無料キャンペーンで動いた主要ユニットは、次の5つね。
| ユニット | 今回見えたこと | なお確認が必要なこと |
|---|---|---|
| 来訪者 | 無料をきっかけに多くの人が島へ渡った | 次も自費で来るか、接点が残ったか |
| 島民 | 生活航路としての配慮は意識されていた | 観光需要による負荷はなかったか |
| 船会社 | 一時的な需要増と補填効果が見込めた | 継続利用につながったか |
| 島内事業者 | 来訪機会は増えた可能性がある | 消費・問い合わせ・負荷の実態 |
| 笠岡市・笠岡市観光協会 | 集客施策としては動いた | 受け皿・追撃・効果測定の設計 |
提督:
了解。
o3ニキ、これまでの分析を経た上での、キャンペーンに対する君の評価は?
勝利条件判定
o3ニキ:
勝利条件を三層で判定。
第1層:集客
達成の可能性が高い。
無料化により、普段より多くの人が船に乗ったことは確認可能。
第2層:体験
判定保留。
島内で何を体験し、どこで消費し、何に困ったのかのデータが不足。
第3層:継続
未確定。
自費再訪、SNS投稿、LINE登録、次回接触の状況が見えない以上、「地域施策として成功」とまでは判定できない。
結論。
入口としては成功、総合判定は保留。
残存課題
提督:
……なるほどねぇ。
船は埋まった。
それ自体は、喜んでいい。
でも、島で暮らした経験と直感が、「それで満足しちゃダメだ」と言ってくるんだよなぁ。
島に人が降り立ったあと、
- 誰がどこに立ち寄ってくれたのか
- 島のどんなところを面白がってくれたのか
- 島の人たちは喜んでくれたのか、ありがた迷惑だったのか
- 「次は自費で来よう」と思ってもらえる繋がりができたのか
そこが見えないままでは、「一日のどんちゃん騒ぎ」で終わっちゃうよ。
地域振興策として問うべきなのは、「何人来たか」だけじゃない。
「何が残ったか」だと思う。
……あー、そうだ。
ベレッタ、CICとしての結論は?
CIC統合判定
ベレッタ:
In summa.(総括するわ)
CICとしての統合判定を述べるわ。
今回の乗船料無料キャンペーンは、来訪機会の創出という意味では、有効だった可能性が高い施策ね。
一方で、
- 航路利用促進
- 島内事業者の経済活動の下支え
- 来訪者との関係継続
という目的まで含めて評価するには、受け皿、観測、再接触の設計が十分に見えていない。
したがって、本施策は、
「入口としては成功の可能性が高いが、地域施策としての総合評価は保留」
というのが、現時点での妥当な判定よ。
よって、次フェーズで確認すべき事項は明確。
- 島内の受け皿は機能していたか
- 来訪者は島内で何を体験したか
- 事業者側に売上・負荷・手応えは残ったか
- 来訪者との再接触導線は設計されていたか
- 次回施策へ活かせる観測データは残ったか
次のフェーズでは、とくに「受け皿」と「現場導線」へ探索範囲を広げるわ。
提督:
了解。
では次は、船を満席にしたその先――
「島が来訪者をどう受け止めたのか」を見に行こう。
自治体職員向けまとめ:企画書に1行だけ足すなら
もし、自治体職員さんがこの図上演習から1つだけ持ち帰るなら、次の1行でよいと思います。
実施後に確認すること:参加者数/困りごと/次回案内の可否
最初から完璧なKPI設計やCRM設計を目指す必要はありません。
(KPIは「成功かどうかを見るポイント」、CRMは「一度関わった人と次もつながれるようにする考え方」くらいに捉えれば、まずは十分です。)
まずは、自分の企画メモや事業実施後の振り返りに、次のような小さな問いを足す。
- 人は来たか
- 何を体験したか
- 何に困ったか
- 次につながる接点は残ったか
- 次回は何を変えるか
この程度でも、企画は「実施して終わり」から一歩進みます。
最初に整える3つのステップ
この記事では多くの観測点を挙げましたが、最初から全部やる必要はありません。
自治体職員(とくに若手職員)が自分の企画メモや実施報告に反映するなら、まずは次の3つで十分です。
- 実施後に見る数字を1つ決める
例:参加者数、再参加意向、困りごとの数 - 困りごとを1つ拾う
例:アンケート自由記述、現場担当者の感想、事業者の一言 - 次回案内できる接点を1つ残す
例:SNSフォロー、LINE登録、次回案内希望、公式サイト誘導
これだけでも、企画は「実施して終わり」から「次回に残る企画」へ近づきます。
AIで企画書案を整えることはできます。
しかし、
- 何を成功とするか。
- 何を測るか。
- 誰に何を残すか。
そこを決めるのは、人間の仕事です。
AIは、問いの浅さも深さも映します。
だからこそ、AI時代の自治体職員、とくに若手職員に必要なのは、プロンプト集だけではありません。
公開資料を読み、問いを立て、実施後に説明できる仕事へ変える力です。
庁内で評価される仕事には、もちろん意味があります。
ただ、その仕事を庁外の人にも説明できる形にしておくと、あなた自身の力になります。
「イベントを実施しました」ではなく、
「参加者数、困りごと、次回接点を確認し、次回改善につなげました」
と言えるだけで、同じ仕事の見え方は変わります。
施策を読む力、問いを立てる力、実施後に説明できる力は、自治体の中だけでなく、どこへ行っても使える力です。
次フェーズへ

ほな、ここから先はウチから「どの記事に進んだらええか」を案内するで。
ここまでの図上演習では、まず「人が来た」は施策成功なのか、という入口の評価を見てきました。
次に読むなら、以下の順番がおすすめやね。
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次の盤面では、船を降りた来訪者を島側がどう受け止めたのか、つまり「受け皿」と「現場導線」を見ていきます。
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13th Fleet公式サイト、note、YouTube、X、まさてん(提督の個人ブログ)などの関係をまとめた案内ページです。「そもそも13th Fleetって何?」という方は、ここから入ると迷いにくいです。
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生成AIを単なる便利ツールではなく、道具・鏡・問いとして捉える13th Fleetの基本姿勢を整理しています。

船を満席にするだけでは、航海は終わりません。
港に着いた人を、どこへ案内するのか。
もう一度来てもらうために、どんな灯りを残すのか。
図上演習-001は、次の盤面へ進みます。
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